理系大学院生の雑記

2018年に東工大工学院電気電子系の院試を受験、合格しました。私が合格するために行った勉強法などを共有したいと思います。是非参考にしてください。

TOEICについて

受験年度の5月までにTOEICを受験する必要があります。
受験生の方はどれくらいの点数をとるべきか非常に気になっていると思いますが、残念ながら信憑性のある情報は出回っていません。
よって何点取ればいいのかということをいうことはできませんが、平均点は600~650ほどで、アドバンテージは700から得ることができると思います。また500以下は一定点数だという噂があります。

全てが推測の世界になってしまいますが、500以下30点、850で満点、500~850で直線で点数増加だと考えると

TOEICスコア 点数
500 30
600 63
700 97
800 130
850 150
となります。 合格点数が950点の6割570点だとするとTOEICスコアによって筆記試験で取るべき点数はどれだけ変化するでしょうか。
TOEICスコア 筆記ボーダー
500 69%
600 66%
700 64%
800 61%
850 60%
TOEICスコアが100あがると33/950=0.03つまり全体の3%増加です。これを大きいと見るか小さいと見るかですが、500と満点では全体で10%ほどの違いがあります。すべてが推測のなんの信憑性もない記事ですが、TOEICはある程度取る必要があると思います。

電気回路

例によって忘れていたことが多すぎたので簡単な理論本からはじめました。

単位が取れる電気回路ノート (KS単位が取れるシリーズ)

単位が取れる電気回路ノート (KS単位が取れるシリーズ)

めちゃくちゃわかりやすいですが、ホントに入門書です。多くの人はいらないと思います。私には非常に役立ちました。

次にちゃんとしたというか理論を身につけるため電気学会の参考書を読みました。基本的にはわかりやすいですがところどころわかりませんでした。このレベルの理論を知っていれば問題ないです。

電気回路論 (電気学会大学講座)

電気回路論 (電気学会大学講座)

演習書

解きながら学ぶ電気回路演習

解きながら学ぶ電気回路演習

はじめにこの演習書に取り組みました。基本的な問題が多く、とっつきやすいです。東工大の難易度とあった演習書でこれだけでもいける気がします。でも三相交流や分布定数回路はないです。
詳解電気回路演習 上

詳解電気回路演習 上

この詳解上下が演習書として良いと思いました。問題数が多いので解く問題を選ぶ必要がありますが、優しい問題から難問まであるので重宝します。過去問を解くときにも参考にしながら解けるので持っておくべきだと思います。

分布定数回路

自大で学ばなかったのでかなり苦労しました。結局東工大レベルの問題であれば、過去の講義ノートで対応できると思います。
H22年度 | 回路理論 a - TOKYO TECH OCW
東北大や千葉大講義ノートもかなり参考になります。
http://www.ecei.tohoku.ac.jp/yamada/Lecture/yamada/index.htm
http://www.te.chiba-u.jp/~ken/lecture/Trans-4.pdf

電子回路

残念ながら私の受験年度にはでませんでしたが、非常に対策のしやすい科目です。トランジスタMOSFETのみで、他にはオペアンプだけです。

基本からわかる 電子回路講義ノート

基本からわかる 電子回路講義ノート

まずめちゃくちゃ簡単な参考書が上のものです。MOSFETオペアンプの基本的な考え方が身につきます。特にイマジナリーショートがわかりやすく書かれていました。

まともな参考書は他大の受験を考えれば

アナログ電子回路―集積回路化時代の―

アナログ電子回路―集積回路化時代の―

が適切だと思います。問題の解説もわかりやすいです。

電子情報回路 I

電子情報回路 I

東北大の教科書です。これも問題の解説がわかりやすいのでおすすめです。主にこれを使いました。これが読めればこれだけでもいいと思います。

H25年度 | アナログ電子回路 b - TOKYO TECH OCW
講義ノートにも基本的な考え方が載っています。FETの等価回路での計算方法などが詳しいです。想定問題の発振回路の類題が載っています。参考にしてください。

電磁気学 対策

電磁気学もその場しのぎの勉強しかしていなかったので基礎固めから行いました。
私のように基礎固めが必要な方はマセマの電磁気学から始めるべきです。ひたすら繰り返し読みました。基礎的な問題は載っており、これをすべて解けるようにするだけでもある程度実力はつくと思います。

次に東工大の教科書

電磁気学 (電子情報工学ニューコース)

電磁気学 (電子情報工学ニューコース)

これは理論が非常にわかりやすくまとめられています。マセマとどちらを先に読むべきか迷いますが、こちらから読めそうならこちらから読むべきだと思います。入試問題との関係性が非常に強く過去にはほぼすべての問題が乗っていたこともあります。必須です。

演習書

電磁気学演習 (理工基礎 物理学演習ライブラリ)

電磁気学演習 (理工基礎 物理学演習ライブラリ)

マセマと東工大の教科書を読めるようになればこの演習書の問題をある程度解けるようになっていると思います。全範囲網羅しているのでこの問題集を終えれば過去問を見て何を使えばいいかわからないという状態からは抜けられると思います。3周程度すれば院試で戦えます。おすすめです。

詳解電磁気学演習

詳解電磁気学演習

この演習書はあまりにも問題数が多く、すべての問題を解こうとすると電磁気の対策だけで勉強時間が足りなくなってしまうと思います。過去問でわからない問題があればこの演習書を見るとだいたい載っています。私は辞典のように使っていました。サイエンス社のものではなくこの演習書をメインに使う受験者も多いようです。好みの問題だと思います。

演習大学院入試問題 物理学 1

演習大学院入試問題 物理学 1

大学院入試問題解法と演習電気・電子・通信 (1)

大学院入試問題解法と演習電気・電子・通信 (1)

大学院入試の問題集です。問題の解き方にくせがあり少し参考にしにくいですが、様々な大学院の入試問題を掲載しており、どういった問題が出やすいのか、他大学を含めた院試の難易度の把握などに役立ちます。東大はやはり難しいですね。東工大を目指すのであればいりません。

総括

私の例ではマセマ(4~5月)→サイエンス社3周(5~6月)→過去問やってみたがわからん(6月)→東工大教科書読む→復習と詳解見ながら過去問回答づくり(7~8月)
という感じでした。

私は途中まで教科書いらないんじゃないかと思っていたため、かなり無駄が多かったように思います。おすすめの順番としてはマセマ→東工大教科書読む→過去問の傾向掴む→演習書理解できるまで(過去問の頻出範囲重点的に)→過去問回答づくり
がいいと思います。是非参考にしてください。

参考書の数が多く出費がかさみますが、私は大学の図書館で借りたり、アマゾンで中古で購入しました。中古の商品は意外と売れているので早めに確保したほうがいいかもしれません。

電気数学 対策

私は学部時代その場しのぎの勉強しかしていなかったため、全く基礎ができておらず、過去問を見ても全く解き方が思い出せないという始末でした。

そのため最初に基礎固めのためマセマシリーズで勉強しました。マセマは常微分方程式複素関数フーリエ解析ラプラス変換統計学、ベクトル解析を使用しました。しかし今考えると東工大の場合を考えればマセマでも十分すぎるというか必要のない範囲まで含むのでやらなくても問題ない科目もあるのかなと思いました。東大ではかなりいいらしいです。

私がおすすめする勉強法はOCWという東工大講義ノートを見れるサイトと東工大の教科書で基礎固めし、そこに掲載されている演習問題や、過去問を解くという方法です。過去問もOCWだけで解ける問題ほとんどだと思います。
リンク先参考にしてください。

解析学微分方程式複素関数

H29年度 | 解析学(電気電子) - TOKYO TECH OCW
微分方程式複素関数はこの講義ノートだけで十分満点を取れるはずです。私は完答できました。
微分方程式ですが、偏微分方程式も過去に出題されているため、勉強しておきましょう。

フーリエ解析ラプラス変換

H27年度 | フーリエ変換及びラプラス変換 - TOKYO TECH OCW
フーリエラプラス東工大の参考書をメインに勉強しました。

電気情報数学 (電子情報工学ニューコース)

電気情報数学 (電子情報工学ニューコース)

こちらがフーリエラプラスの教科書です。かなり薄く、内容も非常にわかりやすいです。この教科書でわからないことがあればマセマを参照しながら進めるという形で勉強しました。フーリエはマセマ買うべきかもしれません。

H27年度にサンプリング定理、H31年度には離散フーリエ変換が出題されました。この教科書にほぼそのまま載っているので離散フーリエ変換についての知識がない方には必須だと思います。(私は出ないと思っていたためほとんど解けませんでした...)
この教科書を完璧にすれば問題ないです。(z変換除く)

ベクトル解析

これは電磁気学講義ノートですが、最初の数回はベクトル解析の演習、回答を掲載しています。ぜひ参考にしてください。
H29年度 | 電磁気学第一 - TOKYO TECH OCW
ベクトル解析は電磁気学の授業の4回ほどだけで終了しているため、教科書の演習問題を解いても万全を期したという確信が持てず不安になりました。これは他に参考書を使うべきだと思います。特に参考書を持っていなければマセマおすすめです。この教科のマセマは非常にわかりやすく、過去問と似たような問題が掲載されています。

確率統計

このページに演習問題、解答と講義ノートが掲載されています。H25年、想定問題とほぼ同じ問題が掲載されています。ここの問題がすべて解けるようになればベストです。
H24年度 | 応用確率統計 - TOKYO TECH OCW

確率と統計―情報学への架橋

確率と統計―情報学への架橋

講義に使用されている教科書がこちらです。はっきり言って私にはめちゃめちゃ分かりづらかったです。私はマセマで基本的なことを理解してからこちらに取り掛かりましたが、かなり苦労しました。ですが、この教科書に沿った問題が出されるのは明らかなので持っておくべきだと思います...
この科目の勉強法は最適化されていないと思うので、なにかいいのがあれば共有したいと思います。


電気数学は電磁気学と電気回路の基礎となる科目なので、はじめに取り掛かるべきだと思います。範囲が広いので対策が大変ですが、確率統計とベクトル解析は軽く触れて専門科目に進むのもありだと思います。もちろん取り組むべきですが優先順位は低いです。

試験科目について

東工大電電の試験科目は電気数学、電磁気学、電気回路の3つです。電気数学と電磁気学は90分、電気回路は1時間の試験時間です。ここではそれぞれの試験の特色について少し触れたいと思います。

電気数学

電気数学は、微分方程式フーリエ解析複素関数ラプラス変換、ベクトル解析、確率統計といった6つの科目から構成されており、すべてが出題されるわけではなく、この内の3つが出題されます。


 電気数学が試験科目に追加されてからまだ5,6年なので完全な傾向はわかりませんが、出題頻度は微分方程式=複素関数=フーリエ解析ラプラス変換>>ベクトル解析=確率統計といった感じです。H31年度では出題頻度の高い3つがそのまま出題されました。出題頻度の低いベクトル、確率はH26年度の一度しか出題されたことがありませんが、万が一が怖かったので私は勉強していました。捨てている方も多かったです。

 

出題範囲をまとめてみました。出題されている科目が偏っていることがわかると思います。

試験実施年度 試験科目:電気数学
H25 フーリエ級数展開、確率統計、2階微分方程式
H26 2階微分方程式複素解析、畳込み積分(フーリエ)
H27 複素解析、サンプリング(フーリエ)、偏微分方程式
H28 連立常微分方程式複素解析積分(おそらくフーリエ)
H29 常微分方程式ラプラス変換フーリエ級数展開複素解析
H30 偏微分方程式(常微分方程式に帰着)、複素積分、離散フーリエ変換
想定問題 2階微分方程式、複素フーリエ級数展開、確率統計

 

電磁気学

電磁気学コンデンサから電磁波まで非常に幅広く出題されており、対策は大変です。私は一番苦労したかもしれません。出題の仕方に癖があるのですが、最近の3年はちゃんと読めば基本的な定理を使うだけみたいな問題が多いので、適切な問題集、教科書で勉強すれば点数は取れると思います。

電磁気学コンデンサがほぼ毎年出ていますね。重点的に学習するべきだと思います。

試験実施年度 電磁気学
H20 コンデンサ、磁気回路
H21 誘電体を含むコンデンサ、磁気回路、アンペアの法則
H22 ガウス、アンペア、ファラデー、電流の伝搬
H23 コンデンサ、ビオ・サバール
H24 球体の映像法、電流の伝搬
H25 誘電体を含むコンデンサ、磁気回路
H26 コンデンサベクトルポテンシャル、磁性体
H27 誘電体を含むコンデンサポアソン方程式、アンペア、ファラデー
H28 コンデンサ、磁場の鏡像法、ビオ・サバール、
H29 アンペア、ビオ・サバール、コンデンサ、電磁波
H30 コンデンサ、電気双極子、磁気回路
想定問題 誘電体を含むコンデンサ、電流の伝搬、変位電流

電気回路

電気回路はその名の通りの電気回路と電子回路が出題されます。そのはずだったのですが、H31年度では電子回路が出題されませんでした,,,,,,

おそらく大多数の大学で学ぶ電気回路の範囲から幅広く出題され、それには分布定数回路も含みます。でも分布定数回路はここ3年は出題されていません。電磁気学よりも電気回路のほうが対策しやすく、点数を稼げる科目だと思います。

 

試験実施年度 電気回路
H20 三相交流、分布定数回路、コイルのQ値
H21 テブナン、消費電力最大化、F行列、Q値、位相
H22 過渡応答、フーリエ
H23 Z行列、重ね合わせ、電力最大化、分布定数回路
H24 F行列、インピーダンス整合、三相交流
H25 交流回路、過渡応答、MOSFET(少電流等価回路)
H26 分布定数回路(Sパラ)、過渡応答、三相交流オペアンプ
H27 変圧器、分布状数回路、MOSFET
H28 過渡応答、MOSFET
H29 オペアンプインピーダンス整合
H30 テブナン、重ね合わせ、交流の過渡応答
想定問題 交流回路、過渡応答、MOSFET(発振回路)

 

それぞれの科目について他の記事で勉強法を述べたいと思います。

 

 

東工大電気系の倍率

これは勉強とはあまり関係ないことですが、東工大の院試の倍率が非常に気になった時期があり、調べてみました。(みなさんも気になると思います。

入学試験状況 | 大学院課程入学案内 | 大学院で学びたい方 | 東京工業大学入学試験状況 | 大学院課程入学案内 | 大学院で学びたい方 | 東京工業大学


このpdfの平成30年度を参考にすると電気電子の倍率は約1.48倍ですが、内部生と外部生の受かりやすさの違いが考慮されていません。おそらく内部生の方は9割ほど合格するでしょう。またこれにはA日程の合格者も含まれているため、B 日程の倍率を算出するのは難しいと思います。

私が面接の際に配布された資料からB日程の受験者数、東工大の2017~2018年度の統計データを参考し推定してみました。
統計データ | 情報公開 | 東工大について | 東京工業大学

全受験者数 235人
B日程受験者数 190人
A日程合格者数 235-190=45人
全体合格者数 170人
B日程合格者数 170-45=120人
B日程倍率 1.58倍
ここから推定
2017年度3学年電電内部生数 84人
なんやかんやで内部受験者数 80人
内部生のB日程受験者数 40人(半分推薦なので
外部生のB日程受験者数 190-40=150人
内部生無条件で合格として残りの席 120-40=80人
B日程の外部倍率 150/80=1.88倍

結構な推測ですが、大幅にずれていることはないと思います。きつめに想定しましたが倍率は2倍弱ですね。学部への入試倍率3~6倍を考えると非常に入りやすい試験だと思いますが、油断はできない、そういった倍率だと思います。

それと意外だったのがA日程合格者の少なさです。内部生だけでほぼ埋まっていることを表す数だと思います。A日程に進んでも外部だと落とされやすいという噂もあるので、東工大を目指すのであれば筆記試験の対策に力を入れる必要があるでしょう。